HYPEを買い集めた上場投資商品と上場企業は、2026年8月時点で7つ確認できます。名前は報じられていても、どの会社がどれだけ持っているのかまでは表に出てきません。ここで数えるのは、その保有量です。

米国に上場する現物ETFは3本で、合計の保有は約443万HYPEです(2026年8月3日時点)。一方、1社で2,000万HYPE超を保有する上場企業があります。

この記事では、出どころと時点をそろえながら、両者の仕組みと限界を順に見ていきます。価格がこの先どうなるかという話ではなく、いま誰がどれだけ持っているかを確かめる話です。暗号資産も関連する株式も、元本割れの可能性を伴います。

HYPEを持つ2つの形

上場投資商品(ETF/ETP)とは

証券口座で株式と同じように売買でき、その裏側で現物のHYPEを保有する商品です。米国では2026年5月から3本が上場しています。実際にHYPEを保有するのは信託(トラスト。受託者が資産を分別して管理する法的な仕組み)で、投資家が持つのはその持分にあたる株式です。日本の証券会社はこの種の商品を扱っておらず、理由は記事の後半で述べます。

財務資産として買い集める上場企業とは

本業とは別に、暗号資産を貸借対照表に載せて保有する上場企業です。トレジャリー企業と呼ばれます。この株式を買うと、会社が保有するHYPEへの間接的なエクスポージャー(値動きへの連動)を持つことになります。ビットコインには先行する事例がありますが、規模も歴史の長さも大きく異なります。

保有枚数が動く理由も違います。ETFの信託が持つ枚数は、設定(新しく株式を作って信託にHYPEを入れること)と償還(株式を消して中身を出すこと)、それに分配の有無で増減します。運用会社が相場観に基づいて売り買いする設計ではありません。トレジャリー企業の保有枚数は、取締役会と経営陣の判断で増減します。

2026年5月18日、Bitwiseは自社のHYPE現物ETFであるBHYPの運用報酬の10%相当を、自社のバランスシート用のHYPE購入に充て、取得分は自社のステーキング基盤でステークすると発表しました。ETFの発行体自身が、HYPEを財務資産として保有する側でもあります。両者を無関係な区分として並べることは、この時点でできません。

数字で見る規模

THYPBHYPHYPG
運用会社21SharesBitwiseGrayscale
上場2026年5月中旬・Nasdaq2026年5月15日・NYSE Arca2026年6月3日・Nasdaq
経費率0.30%0.34%0.29%
免除2027年7月27日まで全額上場から1か月、かつ最初の5億ドルまでなし
ステーキングありあり(目標70%)上場時点で未稼働。「規制の明確化」を条件とする記述
カストディアンAnchorage Digital BankとBitGo Bank & Trustの二重体制Anchorage Digital BankAnchorage Digital Bank(2026年4月に変更と報じられる)
現物を保有するのは信託信託信託
枚数が動く場面設定・償還・分配設定・償還設定・償還

表中のステーキングは、保有するHYPEをネットワークに預けて報酬を受け取る仕組みです。カストディアンは、資産の保管を担う業者を指します。表示上の経費率と実際に払う額は別で、THYPとBHYPは免除期間中です。期間や上限を過ぎれば表示の率に戻ります。

ETFの規模

3本の純資産の合計は、約2.53億ドル(2026年8月3日時点)、1ドル158円換算で約400億円です。HYPEに換算すると約443万枚になります(1HYPE=57.06ドル、2026年8月5日時点)。ただし枚数を公式に開示しているのはBHYPだけで、2026年8月4日時点で約172万枚です。THYPとHYPGの枚数は、公表された純資産を同時点の価格で割った、本記事の計算による概算です。

ビットコインの現物ETFには、純資産500億ドル規模のものがあります(2026年時点・最大のファンド)。HYPEの3本合計はその約0.5%です。

利回りが目減りする2つの理由

3本とも設計上はステーキングを組み込んでいますが(HYPGは上場時点で未稼働)、報酬がそのまま投資家に届くわけではありません。理由は2つです。①報酬の25〜30%を、運用会社・ステーキング業者・カストディアンが受け取ります。②保有するHYPEの全量をステークするわけではなく、BHYPは約30%を償還への備えとしてステークせずに残しています。

この2つを通した後、BHYPの公式開示ではグロス約2.25%に対してネット約1.18%となっています(2026年8月時点)。これはBHYPに固有の数値です。他の2本の実効利回りは、それぞれの開示で確認する必要があります。未ステークの約30%が何の備えなのかは、後半のリスクの節で扱います。

利回りの受け取り方が2通りある

投資家への渡り方も商品で違います。THYPは四半期以上の頻度で現金を分配する設計で、その原資は同額のHYPEを信託が売却して作ります。BHYPとHYPGは分配を行わず、報酬は基準価額(NAV。1株あたりの純資産額)に反映されます。分配のある商品では、分配のたびに信託が現物を売ることになります。

財務資産として保有する4社

2026年8月時点で確認できるのは4社です。表のmNAVは、時価総額を保有資産の価値で割った倍率です(読み方は後の節で扱います)。

企業(ティッカー)HYPE保有資金調達mNAV特記
Hyperliquid Strategies(NASDAQ: PURR)2,000万枚(2026年4月末・会社開示。その後も買い増し)コミテッド・エクイティ・ファシリティによる株式発行0.75〜1.18倍(計算方法による)負債ゼロ・現金1.03億ドル(2026年4月末)。保有の100%のステークを目標とする。自社株買いも実施
Hyperion DeFi(NASDAQ: HYPD)約200万枚(2026年8月・第三者集計)5,000万ドルの私募増資(PIPE、2025年)0.24〜0.36倍旧Eyenovia。株価は52週高値から約82%下落
Lion Group Holding(NASDAQ: LGHL)約19万枚(2026年7月・第三者集計)キャピタル・ファシリティ本記事では扱わない2026年5月26日に1枚も売っていないと表明
HYLQ Strategy(CSE: HYLQ)0枚(2026年6月23日に全量売却)該当なし該当なし売却後の再配分先を検討中と表明

PURRの資金調達にあるコミテッド・エクイティ・ファシリティは、あらかじめ定めた枠内で株式を発行して資金を得られる契約、LGHLのキャピタル・ファシリティは、あらかじめ定めた枠内で随時資金を引き出せる契約を指します。LGHLについては、参照した第三者集計の時価総額が保有資産と桁の合わない値のため、mNAVを扱いません。

合計と分母

ETF3本の合計が約443万枚であるのに対し、PURR1社の保有は2,000万枚(4月末開示。その後も増加)です。「ETFがHYPEを買い集めている」という形の説明を見かけますが、規模で見て大きいのは企業側です。

ETF3本と企業4社を合わせると、4月末開示ベースで保有は約2,660万枚、約2,400億円分です(編集部試算)。総供給9億5,531万枚に対して約2.8%、CoinGeckoが表示する流通供給2億2,245万枚に対しては約12%です(同)。PURRのその後の買い増し(後述)を反映すると、合計は約3,500万枚・流通供給比13%超に達するとみられます。ただし流通供給の表示は集計元で割れており、2.53億枚とする集計も3.33億枚とする集計もあります。同じ枚数でも、分母の定義しだいで約8%から約12%まで振れます(供給の構造はB-13、集計差はB-33)。

ここで数えたのは米国上場の3本と企業4社で、欧州の上場商品は含めていません。また、この2,660万枚の大半はさらにステークされており、ステーキング済みの枚数(B-33)と重なります。区分を足し合わせる形の計算には向きません。

並べた数字は時点もそろっていません。PURRの2,000万枚は2026年4月末の会社開示、ETFの枚数は8月上旬の集計です。PURRはその後も公式ダッシュボードで週次の開示を続けており、外部集計では2026年7月中旬時点で約2,900万枚まで買い増したとされます。本文と表の数字は、比較の基準をそろえるため4月末の決算開示ベースで統一しています。

「動かない枚数」ではなかった

HYLQは最高値の当日に売っている

2026年6月16日、HYPEは76.87ドルの最高値を付けました。同じ日、カナダのCSEに上場するHYLQ Strategy Corp.は、保有の半分にあたる5万枚を平均73.49ドルで売っています。1週間後の6月23日には残りも売り、合計104,461枚を手放して保有はゼロになりました。約10万4千枚を平均約38ドルで取得しており、実現リターンは約77%と発表されています。取締役会は、この投資サイクルの段階では利益を実現して財務的な柔軟性を高めることが株主の利益にかなうと判断した、と説明しました。

全体の中では小さい

約10万枚は、企業4社の保有合計約2,220万枚の約0.5%にあたります。2026年8月時点で保有HYPEの売却が確認できるのはHYLQのみです。PURRは負債がなく現金1.03億ドルを保有しており(2026年4月末)、返済のために資産の売却を迫られる債務がありません。LGHLは2026年5月26日に、HYPEを1枚も売っていないと表明しています。HYPDはmNAVが大きく1を下回っていますが、2026年8月時点で保有HYPEの売却は確認されていません。

それでも前提は更新される

「ETFや上場企業が持つ枚数は市場に出てこない」という前提は、条件付きでしか成り立ちません。企業の保有は経営判断で市場に戻り得ますし、ETFも資金流出が続けば同じ方向に働き得ます。もっとも、ETFの償還には現物を渡す経路もあり、受け取った側がそれをどう扱うかは市場次第で、必ずしも単純な売りにはなりません。流通枚数から保有分を差し引く計算は、時点ごとの推計として扱うのが実態に近いところです。

mNAVという指標の読み方

mNAVとは

mNAV(時価総額を保有資産の価値で割った倍率)は、トレジャリー企業を見るときによく使われます。1倍は、株式市場がその会社を、保有資産とちょうど同じ金額で評価している状態です。1倍を超えているときは、100の資産に対して株式が120で評価されていることになります。この状態で株式を発行して資産を買えば、120で集めた資金が100の資産に変わり、1株あたりの保有資産は増えます。1倍を下回っているときは逆で、80で集めた資金しか入らないのに100の資産を渡すことになり、既存の株主の1株あたりの保有資産は減ります。

mNAVが1を割ることは、株価が安いという以上に、株式を発行して資金を集め買い増すという仕組みそのものが止まることを意味します。

PURRは両方を実行している

PURRは、あらかじめ定めた枠内で株式を発行して資金を得る仕組み(コミテッド・エクイティ・ファシリティ)で、2026年8月時点までの累計で3,840万ドル分を平均約6.31ドルで発行し、あわせて約1,050万ドル分の自社株を平均約3.42ドルで買い戻しています。どちらも計画ではなく実施済みです。発行は株価の高い局面、買い戻しは安い局面にあたり、前段の1倍を境にした2つの行動を、同じ会社が両方とも取っています。

計算方法で結論が変わる

同じPURRのmNAVが、株式数の数え方だけで0.75倍にも1.18倍にもなります。2026年8月5日の株価と2026年4月末の保有・現金で計算した場合、発行済株式1億3,462万株を使えば約0.75倍、潜在的な株式を含む完全希薄化ベース(優先株とワラントを含みます)の2億1,050万株を使えば約1.18倍です(いずれも編集部試算。なお、その後の増資で株式数は増えており、この計算は4月末〜8月上旬時点の前提によるものです)。発行済株式数を多く取れば時価総額も大きくなるため、mNAVは上がります。完全希薄化ベースの1.18倍は割高を意味するのではなく、分子の数え方が変わっただけです。第三者の集計では0.84倍と表示されており、これは保有枚数を1,760万枚として計算しているためです。

HYPDは4通りの集計いずれでも0.24〜0.36倍の範囲に収まります。1を下回っていること自体は、割安を意味しません。事業そのもののリスク、株式の流動性、将来の希薄化余地など、市場が割り引く理由は複数あります。

前段のPURRでいえば、発行済1億3,462万株に対して完全希薄化ベースは2億1,050万株で、約56%の希薄化余地があります(編集部試算)。

企業株を買うと何の損益を買うことになるのか

PURRの2026年1〜3月期の純利益は1.525億ドルです。同じ期間にHYPEの含み益を1.984億ドル計上しており、含み益が純利益を上回っています。含み益以外の部分は、差し引きでマイナスということです。2025年7月からの9か月累計では、純損失1.654億ドルとなっています。四半期ごとの損益は、事業ではなくHYPEの価格に連動します。

株式の値動きは、保有資産の値動きより大きく振れることがあります。HYPEが最高値から約26%下落した局面で、HYPD株は52週高値から約82%下落していました(2026年8月上旬)。

2026年7月に流入が止まった

6月末から7月上旬にかけて、3本合計で週間1.12億ドルの流入が記録されました(2026年7月6日報道)。その後に流れは変わり、7月単月では約1,300万〜1,500万ドルの純流出(集計元により幅があります)となり、上場後で初めての月次マイナスになりました。7月17日から8月3日までの12営業日は、1日も純流入がないまま累計約2,980万ドルが流出しています。

累計の純流入は2026年8月3日時点で約2.83億ドルを維持しており、流出額は累計の約1割にとどまります。

同じ時期に、プロトコル側の指標も減速しました。週次収益は平均2,300万ドルから750万ドルへ、HYPEの買い戻しは日次で44,000枚超から約22,000枚へ変化しています(B-33)。ETFの流出とプロトコルの減速は並行して起きており、どちらがどちらを引き起こしたのかは、この時系列だけでは分けられません。

リスクと、日本から見た位置づけ

日本からは事実上買えない

国内の証券会社は、米国上場の暗号資産現物ETFを取り扱っていません。投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)が定める「特定資産」に暗号資産が含まれておらず、国内での組成ができないことが背景として挙げられます。改正金融商品取引法は2026年7月15日に成立し、施行は公布から1年以内、2027年内が見込まれます(制度の中身はB-41)。国内の暗号資産ETFはビットコインが中心で、時期は2027年以降とする整理(CoinPost)と2028年にも解禁とする報道(日本経済新聞)があり、確定していません。HYPEについての見通しは示されていません。

目論見書は過去の事故を自ら列挙している

3本はいずれも1933年証券法に基づく商品で、1940年投資会社法に登録された投資信託ではありません。目論見書には、同法の登録商品と同じ保護は受けないと明記されています。21SharesがTHYPと同じ時期に上場した2倍レバレッジ商品TXXHは1940年法登録で、同じ運用会社でも構造が違います。

THYPの目論見書のリスク欄には、Hyperliquidで過去に起きた事故が並びます。2025年3月のJELLYを巡るHLPの損失、2025年10月の清算の連鎖、2025年11月のPOPCATの価格操作です(B-31B-32)。POPCATへの対応として出金とブリッジが一時停止されたことにも触れ、こうした緊急時の介入は分散型の設計が示唆するよりも高い中央集権的なコントロールを示すものと受け取られうる、と記載しています(B-34)。BHYPの目論見書は、年率換算のボラティリティを128.92%と記しています。ETFという形になっても、原資産のリスクはそのまま残ります。目論見書は、そのリスクを法定文書として整理したものです。

償還が詰まる可能性

ステークしたHYPEはすぐには引き出せません。委任には1日のロックがあり、その後7日間の待ち行列を通ります(B-12)。目論見書は、償還の請求が未ステークの保有分を超えた場合に決済の遅延が生じること、極端な場合には償還プログラムが一時停止されうることを記しています。BHYPが約30%をステークせずに残しているのは、この備えにあたります。

米国の税務と、日本の税務は別の話

目論見書には、信託がグランター・トラスト(信託の資産を株主が持分に応じて保有しているものとして扱う形式)として扱われること、株主は信託の収益を自分の所得に取り込むこと、信託がHYPEを売るたびに課税イベントが生じることが記されています。これは米国の税務上の扱いです。日本の投資家にとっての課税関係は別の枠組みで決まるため、B-42で扱います。

まとめ:ETFと企業、数え方で変わる規模

要点を振り返ります。

この記事のまとめ

  • 米国のHYPE現物ETFは3本、純資産の合計は約2.53億ドル・約443万枚(2026年8月3日時点)
  • トレジャリー企業4社の保有は約2,220万枚(4月末開示ベース。PURRはその後約2,900万枚まで買い増したとする外部集計)。PURR1社でETF3本の4倍以上
  • 合計約2,660万枚(4月末ベース)は総供給の約2.8%。最新の買い増しを反映すると流通供給の13%超に達するとみられる
  • HYLQは2026年6月、最高値当日に半分を売り、1週間後に全量を売却して保有ゼロ
  • 同じPURRのmNAVが、株式数の数え方だけで0.75倍から1.18倍まで動く

HYPEのETFは、制度の上での特別扱いではありません。米国の現物ETFはビットコインが2024年1月、イーサリアムが2024年7月、ソラナが2025年秋、XRPが2025年11月、ポルカドットが2026年3月、HYPEが2026年5月です。2025年9月に上場基準の制度変更があり、その後にアルトコインの上場投資商品が相次いで登場しました。2026年3月時点で91件・24トークンの申請が審査中と報じられています。HYPEがどの根拠で上場したのかは一次資料からは確定できず、制度そのものはB-39で扱います。

数字を見るときに効くのは、同じ企業の保有量が1,760万枚・2,000万枚と割れている理由の内訳です。1,760万枚は2026年2月の購入までしか反映していない第三者集計、2,000万枚は2026年4月末時点の会社開示です。割れているのは市場が混乱しているからではなく、更新の時点と出どころが違うからです。保有量や純資産の数字を見たときは、いつ時点の、誰が出した数字なのかを先に確かめておくと、比較のずれを避けられます。

こうした数字を継続的に追いかける手順そのものは、シリーズの最終回で扱います。次の記事では、各国の規制当局がこの市場をどう扱おうとしているのかを整理します。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れの可能性があります。記載の数値は最終確認日(2026-08-13)のものです。

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