日本に住む読者がHyperliquidについて先に確かめたくなるのは、「日本の法律ではどう扱われるのか」という点です。2026年に成立した改正法、レバレッジの上限、無登録業者リストの3つを手がかりに、制度がどこまで決まっているかを確認します。
日本の制度は、日本で登録した業者とその取扱銘柄を軸に組み立てられています。Hyperliquidはその外側にあります。答えるのは「違法かどうか」ではなく、「制度のどの部分が働かないのか」です。
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日本で暗号資産に関係する法律は、資金決済法と金融商品取引法(金商法)です。持って売買する現物を扱うのが前者、先物のように差額だけをやりとりする取引を扱うのが後者にあたります。2026年の改正は、前者を後者に寄せるものです。
制度整備の経緯は、参議院常任委員会調査室の資料(2025年10月28日)が整理しています。
2026年の改正は、この並びの中で性格が違います。特定の破綻への対応ではなく、暗号資産が投資の対象として扱われるようになった実態に制度を合わせるものだと説明されています。
1つ目は、今回の改正でperp(無期限先物)が規制の対象になった、という理解です。暗号資産のデリバティブ取引は、2020年5月の改正法施行以来、すでに金商法の対象です。これを業として行うには第一種金融商品取引業の登録が必要です(金商法2条8項4号、28条1項2号、29条)。2026年の改正でも位置づけは変わらず、創・佐藤法律事務所の解説(2026年4月28日)は「従前から変更はありません」としています。
2つ目は、日本ではperpの提供が禁止されている、という理解です。海外のメディアにこの趣旨の記述が見られますが、国内の登録業者は現に個人向けの証拠金取引(期限のない店頭デリバティブ)を提供しています。禁止されているのではなく、レバレッジの上限が2倍に置かれている、というのが実態に近い整理です。ただし国内の証拠金取引は、取引の相手方が登録業者であること、取扱銘柄が審査を経ていること、分別管理と自主規制が及ぶことの3点で、Hyperliquid上のperpとは前提が違います。
国内の暗号資産口座数は1,403万8,246口座、預託金残高は約2兆8,187億円(2026年2月時点、JVCEA統計)、交換業者の登録数は26社です(2026年6月30日時点、金融庁)。この規模の市場が制度の下に置かれています。
改正法の正式名称は「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」です。第221回国会に提出され、2026年7月15日に成立、7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。
本体の施行時期は、法律案要綱で「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。政令は、内閣が定めるルールで、法律の施行日などを決めるものです。施行日を定める政令は本記事の執筆時点では制定されておらず、実務家の解説では2027年4月の施行が有力視されています(確定した期日ではありません)。
既存の業者には経過措置(制度が切り替わる際に、旧制度のもとで営業していた者に置かれる猶予の定め)があります。創・佐藤法律事務所の整理では、施行日から6か月間は登録を受けずに業務を継続でき、6か月以内に申請すれば処分があるまで最長2年継続できるとされています。猶予期間中も行為規制はみなし適用されます。制度が決まったことと、国内の顔ぶれが入れ替わることのあいだには、数年の間隔があります。
公布から20日を経過した2026年8月12日に施行される部分があります。暗号資産の無登録業に対する罰則の引上げと、証券取引等監視委員会の犯則調査(裁判所の令状に基づく強制的な調査)権限の追加です(金融庁公表、2026年7月29日)。引上げ後の罰則が暗号資産の無登録業にどの条文で及ぶかは、移管の施行日との関係もあり、条文と政令の確認が要ります。
| 主な項目 | 内容 | 施行時期 |
|---|---|---|
| 無登録業に対する罰則の引上げ | 暗号資産の無登録業については、現行の3年以下の拘禁刑から、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金または併科へ | 2026年8月12日施行と金融庁が公表(2026年7月29日) |
| 犯則調査権限の追加 | 証券取引等監視委員会の犯則調査の対象に追加 | 2026年8月12日 |
| 資金決済法から金商法への移管 | 「暗号資産交換業」を「暗号資産取引業」へ。有価証券とは別の金融商品として位置づけ | 公布から1年以内・政令で指定(実務解説では2027年4月が有力視) |
| インサイダー取引規制の創設 | 改正金商法171条の7から171条の10。5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金と課徴金 | 同上 |
| 情報公表規制 | 発行者または取扱業者に情報の公表義務。財務情報は原則として監査証明 | 同上 |
| 民事効の規定 | 無登録業者による未公表暗号資産の売付け等を原則無効とし、立証責任を転換 | 同上 |
インサイダー取引規制の対象は「国内の暗号資産取引業者で取り扱われる暗号資産」とされており、Hyperliquid上の取引にどこまで及ぶかは別の問題です。詳細は政令と内閣府令(法律の下位に置かれ、国会の議決を経ずに改正できるルール)を待つ必要があります。
民事効(契約そのものの効力に及ぶ効果)の規定で無効とされるのは無登録業者による未公表暗号資産の売付け等であって、無登録業者との契約が一律に無効になるわけではありません。
個人向けの上限2倍(預ける証拠金が取引額の50%必要、という形の定め)の根拠は、金融商品取引業等に関する内閣府令に置かれた必要預託額の定めです。
理由として金融庁が挙げているのは、「主要な暗号資産であっても価格変動が激しいものが複数存在していること」と「顧客に対する規制の簡明性確保の観点」です(2021年4月7日公表資料)。2019年の改正では、FX取引と同様の販売・勧誘規制(業者が顧客を勧誘する場面に課される規制。誇大広告の禁止や暗号資産の性質の説明義務など)も整備されました。
2倍という数字は法律ではなく内閣府令に置かれており、法改正を経ずに動かせる位置にあります。
法人の顧客には、個人向けの2倍の規制が適用されません。必要証拠金の設定には、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)が毎週公表する「暗号資産リスク想定比率」が用いられます。基準日2026年8月5日のBTC/JPYの比率は8.18%で、計算上は12.23倍にあたります。事業者の実装がこれと同じとは限らず、SBI VCトレードは法人のビットコインを最大10.00倍としています。
同じ登録業者で、同じ銘柄で、個人と法人では上限が違います。変動の大きさは個人にも法人にも同じようにかかるはずですから、2倍という水準は資産の性質だけから導かれたものではなく、個人の顧客の保護と規制の簡明性を踏まえて置かれた基準だと整理されています。なお、欧州にも個人向けを2倍とする整理がありますが(B-39)、根拠となる規則も対象も別で、数字の一致は偶然に近く、同じルールではありません。
JVCEAとJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)は2023年から上限の引上げを要望しており、JCBAは2023年10月17日に、JVCEA宛の要望書を出しています。もっとも、2024年11月には金融庁内の慎重論を伝える報道があり(日本経済新聞)、2025年12月10日の金融審議会ワーキング・グループ報告にも、2026年の改正法にも、レバレッジ倍率の見直しは入っていません。創・佐藤法律事務所は、他のデリバティブ取引との規制水準の整合性から個人向けで5倍や10倍といった議論が進む可能性を指摘していますが、これは見立てであり、決まった予定ではありません。
無登録業者のリストは、金商法に基づくものと資金決済法に基づくものが、別々に公表されています。金商法に基づく「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」(海外所在業者分の最終更新は2026年7月22日)と、資金決済法に基づく「無登録で暗号資産交換業を行う者」(最新の掲載は2024年11月)です。本記事の確認時点(2026年8月6日)で公表されているこの両方に、Hyperliquidを含むperp DEX(分散型取引所)の記載は確認できませんでした。金融庁は索引ページに「掲載されている無登録業者は、警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られています」と注記しており、掲載がないことは、当局が何らかの評価を与えたことを示すものではありません。
警告書の発出は行政処分ではなく、名称等の公表という形をとり、直接の強制力はないと解されています。弁護士の中野秀俊氏の解説は、金融庁が取り得る措置としてリストへの公表やアプリストアへの削除申立てを挙げ、海外法人の代表者の刑事訴追や海外資産の差押えは実行が難しいと整理しています。
強制力はありませんが、事業判断には効いています。Bybit Fintech Limitedは2024年11月28日に警告を受け(認定事実は「インターネットを通じて、日本居住者を相手方として、暗号資産交換業を行っていたもの」)、その後に日本居住者向けサービスの終了を発表して2026年1月から段階的に利用を制限しました。Binance Holdings Limitedは2018年と2021年に警告を受けましたが、警告を受けた法人とは別に設立されたBinance Japan株式会社が登録を受け、2026年6月30日時点の登録26社に掲載されています。
警告を受けた海外の事業者には、日本から出るか、日本の枠組みに入るかという2つの道がありました。Hyperliquidは、そのどちらの選択も迫られていません。
登録を受けた業者には、口座開設時の本人確認、顧客への情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理といった義務が課されます。加えて、自主規制団体JVCEAの規則による銘柄審査と行為規制、金融ADR(訴訟によらずに紛争を解決する手続)、破綻時に資産を国内へ保有させる命令の制度(FTX破綻時に規定がなかったことを受け、2025年の資金決済法改正で整備)、金融庁の相談窓口があります。金融庁は、無登録業者との取引で報告されているトラブルとして、出金を拒否される、法外な出金手数料を請求される、それまで取れていた連絡が急に取れなくなる、といった例を挙げています(「無登録業者との取引は要注意!!」)。
ここに並べた仕組みは、いずれも日本の登録を受けた業者との関係ではじめて働きます。
日本の制度は、登録業者が取り扱う銘柄を軸に設計されています。JVCEAの銘柄審査には、実績のある銘柄の事前審査を省くグリーンリスト制度と、個別の審査手続が置かれています。
審査に申請されたかどうかは確認できていません。言えるのは、取り扱う登録業者が見当たらない、というところまでです。改正法のインサイダー取引規制も情報公表規制も、対象は国内の取引業者が取り扱う暗号資産を軸に組み立てられており、取り扱う登録業者がない銘柄はその外側です。
利用者の側が罰則の対象になるかについて、政府の公式な答弁による確認は取得できませんでした。以下は、その判断に使える材料です。
①規制が業規制として組み立てられていることです。金商法も資金決済法も、サービスを提供する側に登録や義務を課す形をとります。金融庁の「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」は、次の2点を記しています。
登録の義務も違法という評価も、向けられているのは業として行う側です。ただし、この文書は利用者の側の扱いには触れていません。
②当局の文書は、利用者に向けるときに書き方を変えています。前掲の「無登録業者との取引は要注意!!」は、相手が登録を受けているかの確認を求めたうえで、「無登録業者と取引を行わないよう、注意してください」としています。ただし、主語が変わると書き方も変わる、という以上のことを、この2つの文から読み取ることはできません。
③適用除外の範囲が狭いことです。業種によって適用除外(本来かかるはずの規制の対象から外れる定め)の範囲は異なります。定義府令(金商法2条の定義に関する内閣府令)16条1項4号の2は、海外の業者が日本の登録なしに取引できる相手方を限定する規定で、外国から行う暗号資産関連店頭デリバティブ取引等の相手方を、金融商品取引業者や暗号資産交換業者・信託会社といった金融機関等に限っています。暗号資産に関連するデリバティブは適用除外が狭いと整理されており、有価証券の分野で語られる「勧誘を伴わなければ」という一般論を、そのまま広げるのは無理があります。ただし、この規定が定めているのは業者の側の登録義務の範囲です。
④平成29年の連名文書に、利用者の側に不利な一文があることです。金融庁・消費者庁・警察庁の連名文書「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」があります(平成29年9月29日公表、令和2年4月24日最終更新)。日本語ウェブサイトを閉鎖した海外事業者に触れた文脈で、「海外事業者に関連する取引がある場合、当該取引は、法令に適合していると言い難いため」と記しています(金融庁掲載の旧版による引用です。消費者庁掲載の現行版では、この一文は確認できません)。利用者が「相手方が違法でも自分には関係ない」と考える余地を、この一文は狭めます。ただし、時点も文脈も限定された記述です。
以上を踏まえても、利用者の行為の適法性について、この記事は結論を保留します。Hyperliquid公式の日本語対応の有無も、本記事の調査では確認が取れませんでした。
金融庁企画市場局市場課長の齊藤将彦氏が2026年6月24日に示した資料には、DEXへの対応について次の記述があります。「現状ではDEXについて明確な規制の手法が確立されていないものの、現在の暗号資産交換業者に対する規制とは異なる、技術的性質に合わせた過不足のない規制のあり方について、今後、各国の規制やその運用動向も注視しながら、継続して検討を行うことが適当である」。
検討が続いているのは、規制の要否ではなく手法のほうです。
名宛人(規制が義務を課す相手)の候補も具体的に挙がっています。国内の居住者向けにDEXへ接続するユーザー・インターフェースを提供する事業者に、接続先のリスクについての説明義務や、犯収法(犯罪収益移転防止法)上の本人確認義務を含む規制を課すことが、検討の対象とされています。B-39で確認したグローバルの議論に比べ、候補の示し方が具体的です。
同じ資料には、「規制を見直すことは暗号資産投資についてお墨付きを与えるものではない」という一文も置かれています。金融審議会ワーキング・グループの事務局資料(2025年9月29日)には、国内の交換業者が提供する取引の場への投資者の信頼は、海外業者やDEXでの取引に対する信頼よりも高い、との記述もあります。当局の側が置いている前提であり、そのまま事実として扱えるものではありません。
規制の強化を求める側も、届く範囲の限界を書いています。日本弁護士連合会の「金融商品取引法における無登録業者に対する法執行の強化を求める意見書」(2026年1月16日)は、「海外に拠点を置く無登録業者には、原則として日本の刑罰権が及ばない」と記しました。同意見書が求めたのは、犯則調査の対象への追加、無登録業者との金融商品取引契約を原則無効とすること、罰則の引上げです。これらは2026年7月に成立した改正法の内容と重なっています。
国際的な枠組みでは、位置づけが変わります。FATF(金融活動作業部会)は「DeFiに係る規制上の課題に関する報告書」を2026年7月21日に公表し、金融庁は共同議長国として取りまとめに関与しました。国内では手法が確立していないとしながら、国際的な議論では取りまとめの側にいます。
金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告」(2025年12月10日)には、次の一文があります。「暗号資産には本質的に規制しきれない領域が残ることは認識されるべきである」。
前提として、国内の登録業者からHyperliquidへ直接送金する経路は用意されておらず、資金は自己管理のウォレットを挟んで移すことになります。これから決まる制度には、この経路に関わるものがあります。
政令と内閣府令に委ねられた部分が残っています。前掲の市場課長の資料は、詐欺の防止措置の検討事項として「新規口座開設直後にはアンホステッド・ウォレットへ移転できない等の熟慮期間を設ける等」を挙げています。アンホステッド・ウォレットは、利用者が自分で秘密鍵を管理するウォレットです。確定した制度ではなく、対象の範囲も金額の基準も示されていません。この措置がどう定まるかは、国内の登録業者と自己管理のウォレットのあいだの扱いに関わります。
レバレッジの上限も内閣府令の領域にあります。
商品の側ではETF(上場投資信託)が議論されており、対象はビットコインが中心です。時期は2027年以降とする整理(CoinPost)と2028年にも解禁とする報道(日本経済新聞)があり、確定していません(B-38)。大阪取引所によるビットコイン先物の上場計画は2028年です(B-37)。海外の議論と日本の議論に時差があることは、B-37で確認したとおりです。
要点を振り返ります。
この記事のまとめ
「違法か適法か」という問いに、この記事は答えを出していません。置き換えられるのは、「日本の制度のどの保護が及ぶか」という問いです。分別管理、自主規制団体による銘柄審査、金融ADR、破綻時の国内保有命令、当局の相談窓口。いずれも日本の登録業者との関係で働くもので、その外側では別の前提が必要になります。制度の側で継続して確認できるのは、金融庁の無登録業者リスト2種の更新、施行日を定める政令、内閣府令(レバレッジの上限とアンホステッド・ウォレット関連の措置)、業界団体の取扱銘柄審査です。取引や需給の側の指標は最終回のB-44で扱います。
次の記事では、日本の税金の扱いを整理します。
本記事は法令と公表資料の一般的な整理であり、個別の法的判断についてのものではありません。判断が必要な場面では、原文の確認と、弁護士・税理士等への相談が現実的です。