「次のエアドロップに備えて、いまのうちにポイントを貯めておこう」。Hyperliquid周辺のSNSでは、こうした話題が絶えません。そもそも何の話なのか、どこまで確かなのか判断がつかない、という方に向けた記事です。

確かなことは二つあります。HYPE総供給の38.888%が、将来の配布・報酬のための枠として確保されていること。そして、本体の公式ポイント制度は2024年11月に終了し、第2回配布の公式発表は存在しないことです。期待はこの二つの間で動いています。

この記事では、Hyperliquid本体、その上でDeFiが動くHyperEVM、新しい取引市場を作る枠組みのHIP-3、という3つの層に分けて、何が事実で何が推測なのかを切り分けていきます。ポイントを貯めるかどうかを考えるのは、その仕分けをしてからでも遅くありません。

ポイントは配布の配分基準であって約束ではない

エアドロップの定義と、2024年11月にHYPEが誕生したジェネシス配布の経緯は、B-2で扱いました。この章では、その手前にある「ポイント」という仕組みを整理します。

ポイントは利用実績の数値化であり、配布量を保証しない

ここでいうポイント(プロトコルの利用実績を数値化した指標)は、取引量や預入額に応じて付与され、後日トークンを配る際の配分基準に使われることが多い仕組みです。配分の基準にはなっても、配布の約束ではありません。Hyperliquidの公式ドキュメントも、ポイントを「プロトコルの成功に貢献したユーザーに報いるためのもの」と説明しつつ、過去のポイント配布を独自の裁量で修正する権利を留保すると明記していました。

ジェネシス配布がこの文化の基準点になっている

2024年11月のジェネシスでは、総供給の31%にあたる約3.1億HYPEが約9.4万アドレスへ一括配布されました。VC投資を受けなかったため投資家枠の売り圧が存在せず、外部の請求サイトを経由せずに付与され、受け取った瞬間から自前のスポット板で売買できた。この設計は、他プロジェクトとの対比で語られ続けています。よく引き合いに出されるのがBlast(Ethereum上のレイヤー2)です。ポイント制でTVL(プロトコルに預けられた資産の総額)を約27億ドル(約4,300億円。1ドル=158円で換算。以下同じ)まで伸ばしましたが、2024年6月の配布後に資金流出が続き、2025年には最大時から9割超減ったと報じられました。配布後に崩れた例が積み上がるほど、崩れなかったHyperliquidの配布が基準点として引き合いに出される構図です。

本体のポイント制度はすでに終了している:歴史と運営スタイル

2023〜2024年の2シーズンで公式プログラムは完結した

Hyperliquid本体の公式ポイントは、次のフェーズで構成されていました。

フェーズ期間配布ペース
クローズドアルファ(遡及付与)2023年10月末までの活動シーズン1開始時に遡及ボーナス
シーズン12023年11月〜2024年5月週100万ポイント
シーズン1.5(移行期)2024年5月1日〜28日この期間の活動に特別倍率
シーズン2(通称L1シーズン)2024年5月末〜2024年11月週70万ポイント

報道ベースでは、シーズン2の週次配布は2024年9月末で終わり、その後11月までに計840万ポイントが追加配布されたとされます。公式ドキュメントの記述はここで止まっており、それ以降、本体に公式ポイント制度は存在しません。いま「Hyperliquidのポイント」として語られる話の多くは、本体ではなく周辺で起きています。

換算式は最後まで公開されなかった:予告しない運営スタイル

シーズン中、「1ポイントが何HYPEになるのか」という換算式は一度も公表されませんでした。それどころか、トークンが発行されるのかどうかすら、ジェネシス直前まで公式には明かされていません。コミュニティでは配布後に「1ポイントあたり数HYPE程度(当時のドル換算で数十ドル相当)だったのではないか」という逆算推計が流通しましたが、公式の確認はありません。基準もスナップショット(配布対象を確定するための保有・利用状況の記録時点)も事前に予告しない。この運営スタイルが、現在の文化を読み解く前提になります。

前回の教訓:対象期間は、発表された時点で終わっていた

ジェネシス配布には、駆け込みでポイントを稼ぐ期間がありませんでした。配布が発表されたとき、対象期間はすでに締め切られていたからです。発表を待ってから動いた人には、積める実績が残っていませんでした。この経験が「発表前に先回りして実績を作っておく」という行動を生んでいます。ただし、公式が何も言っていない段階で動く以上、それは推測に対して時間と資金を賭ける行為です。この構造が、次章で見る「Season 2」期待の駆動原理になっています。

「Season 2」はどこまで確かな話か

用語の整理:「Season 2」は公式名称ではない

まず言葉の交通整理です。SNSで言われる「Season 2」は、第2回エアドロップへの期待を指す通称であって、公式の名称ではありません。前章の表にあった公式の「シーズン2(L1シーズン)」とは別物です。さらに、ポイントのシーズン1・2が消化済みであることを理由に、次の配布を「Season 3」と呼ぶ海外ガイドもあり、呼称自体が割れています。名前が統一されていないことは、公式の枠組みが存在しないことの表れでもあります。

残っている事実と、存在しない事実

期待の根拠となる事実は残っています。HYPE総供給の38.888%が「Future Emissions and Community Rewards(将来の排出とコミュニティ報酬)」として留保されていることです。この枠の一部はすでにステーキング報酬として放出されており(仕組みはB-13)、エアドロップ情報を集約する海外サイト(アグリゲーター)では、この枠の相当量が未放出のまま残っているとされます(2026年7月時点・外部集計サイト調べ)。一方で、「ない」ことも同じ重さで確認する必要があります。2026年8月時点で、第2回配布の公式発表・日付・スナップショット告知は一切ありません。「対象になりそうな行動」を列挙する記事は数多くありますが、そのすべてが推測であり、公式の基準はゼロです

期待は推論でできている:確率は情報ではなく賭けの価格

「38.888%が残っている以上、第2回配布はいずれ起こる可能性が高い」という位置づけは、アグリゲーターやコミュニティに共通する見方ですが、公式確認のない分析的推論です。1回の巨大配布ではなく、ステーキング報酬や助成のような段階的放出になるというシナリオを示すメディアもあります。これも推測です。後述する予測市場の確率も含め、こうした数字は参加者の賭け金が作る価格であって、運営の内部情報ではありません。

ポイント文化の現在地は本体の外にある:HyperEVMとHIP-3

第1層(本体の配布待ち)は前章のとおりです。この章では残る2つの層、HyperEVM(詳細はB-9)上のプロトコルと、HIP-3の取引市場を見ます。

実例の対比:配布を終えたKinetiq、まだ配らないFelix

HyperEVMで「ポイントからトークン配布まで」を実際に完遂した代表例がKinetiqです。kHYPEを発行するリキッドステーキング(ステーキングした資産を流動性のあるトークンとして扱える仕組み)のプロトコルで(詳細はB-22)、2025年7月のローンチ初日には24時間で約4.6億ドル(約727億円)が預け入れられました。独自ポイント「kPoints」を経て、2025年10月にガバナンストークンKNTQの発行が発表され、総供給の25%がエアドロップに割り当てられ、2025年11月末に上場しています。上場直後の評価額は全供給換算で約1.3億ドル(約205億円)とされます。

同時に、KinetiqのTVLは2025年10月上旬のピーク約26.3億ドル(約4,155億円)から、上場時には約11億ドル(約1,738億円)へとおよそ6割減りました。報道は、エアドロップ目当ての資金が上場前にポジションを解消したことが要因とみられると分析しています。前者は観測できる数字であり、後者は解釈です。この2つを分けて受け取る読み方が、この文化では特に重要になります。

まだ配っていない例もあります。Felix(ステーブルコインfeUSDを発行するプロトコル)はポイント制度を2026年1月に「シーズン2」へ移行させましたが、2026年8月時点でトークンは未発表です。予測市場Polymarketでは「2026年末までのトークンローンチ」の確率が約50%とされ(2026年6月時点の報道)、期待と不確実性が拮抗しています。

二重取りの期待が資金を動かしている

HyperEVMのプロトコルにポイント目当てで資金を置く行動には、二段構えの期待が乗っています。第一に、そのプロトコル独自トークンの配布。第二に、HyperEVMの利用実績が将来のHYPE第2回配布の対象基準になるかもしれない、という期待です。後者は公式に確認されたものが何もない、完全に非公式の期待です。なお、ポイント効率を上げるために借入と再預入を繰り返す「ルーピング」という資金の回し方が紹介されることがありますが、借入を伴う以上、相場変動時には清算のリスクが付きまといます。

HIP-3:新しい取引面が増えるたびに、配布期待が付いてくる

B-23で触れたHIP-3(HYPEをステークして独自のperp(無期限先物)市場を展開できる枠組み。詳細は第6章)にも、同じ型の期待が生まれています。HIP-3で先行するtrade.xyzは米国株や金などのperpを提供しており、2025年10月から遡及配布の対象期間が始まっているとされますが、トークン発行計画は本記事の確認時点で未発表です(外部サイト調べ)。2026年2月に発表され、5月2日にメインネットで稼働を開始した予測市場の枠組みHIP-4にも、同様の期待が生まれています。ただし外部のビルダーが自分で市場を開設できるパーミッションレス版は、2026年7月末時点でテストネットにとどまっています。新しい取引面が増えるたびに「ここも将来の配布実績になるのではないか」という期待が付随する。これが現在の型です。

TVLはポイント文化込みで読む

ここまでの実例が示すとおり、ポイント期間中のTVLには配布狙いの資金が含まれています。流入で数字が実力以上に見え、配布が確定すると流出する、という循環です。ただし、すべての資金流出がポイントで説明できるわけではありません。Hyperliquid本体でも2025年12月に週間約4.3億ドル(約679億円)の純流出が起きましたが、報道上の主因は相場環境の悪化と競合の台頭であり、エアドロップに絡む流出とは分析されていません。TVLの増減を見るときは、ポイントの循環とそれ以外の要因の両方を考慮に入れるのが安全です。

文化の両面を踏まえて、読者が気をつけること

最初のユーザーを集める仕組みとして機能してきた

この文化には、機能してきた実績があります。Hyperliquid自身がその実例で、トークンもVC資金もない状態から、ポイント制度で2年近くにわたりユーザーを集め、ジェネシスで約9.4万の保有アドレスを一気に生み出しました。Kinetiqがローンチ初日に集めた大量の預入も、ポイントへの期待が新規プロトコルの流動性を短期間で立ち上げた例です。新しいプロトコルが最初の利用者を集める手段として、ポイントは現に機能しています。

もう一方の面:配布の有無も条件も、運営側の裁量にある

同じ仕組みのもう一方の面が、ここまで見てきた資金の循環です。配布の条件・時期・有無を決めるのは運営側であり、ポイントは保有者に配布を請求する法的な権利を与えません。積み上げた実績が配布に結びつかなくても、補償はどこからも出ません。期待が外れる可能性を織り込めないまま投じる資金は、この文化に向いていないといえます。

偽の請求サイトと、受領時の課税に注意する

実害に直結する注意点は、詐欺と税金の2つです。まず詐欺。「Hyperliquid(HYPE)のエアドロップ請求」を騙るフィッシングサイトが多数確認されており、ウォレット接続と署名を求めて資産を抜き取る型が典型です。偽のHyperSwapエアドロップサイトに接続した直後、約12,300ドル(約194万円)が抜かれた事例も2026年に報じられました。判断の起点になるのは、本体のジェネシスは外部の請求サイトを必要としなかったという事実です。本体を騙る請求サイトは、まず疑う対象になります。とはいえ、エコシステム側の配布には正規の請求手続きが存在する場合もあります(KNTQの受領には期限内の規約同意が必要でした)。したがって原則は「公式X・公式Discordから辿ったリンク以外は開かない」「シードフレーズの入力を求められたら詐欺と判断する」の2点に集約されます。

もう1つが税金です。受け取った時点で市場価格が付いているトークンは、売却していなくても、受領時の時価が課税所得として扱われ得ます。国内の税務情報サイトでは原則として雑所得に算入されると整理されており、給与所得者でも、暗号資産関連を含む給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると原則確定申告が必要です。詳細はB-42で扱いますが、税制は変更され得るため、個別の申告判断は税理士に相談するのが確実です。

まとめ:「公式の発表か、推論か」の仕分けが出発点になる

ポイント文化の事実と推測を切り分けました。要点を振り返ります。

この記事のまとめ

  • ポイントは利用実績の数値化。配布の配分基準に使われても、配布の約束ではない
  • 本体の公式ポイント制度は2024年11月で終了。以降、本体に公式ポイントは存在しない
  • 総供給の38.888%の留保は事実、第2回配布の公式発表はゼロ(2026年8月時点)。期待はこの間で動く
  • ポイント文化の主戦場は本体からHyperEVM・HIP-3へ。Kinetiqは配布を実現し、配布後にTVLが約6割減
  • 偽の請求サイトと、受領時点で発生し得る課税に注意

実践に移す前の指針は、一点に絞れます。ポイントやエアドロップの話を見かけたら、まず「これは公式の発表か、それとも推論か」を確かめることです。公式の発表はHyperliquidの公式Xと公式ドキュメントで照合でき、そこに見当たらなければ推論に分類できます。この仕分けだけで、流れてくる言説の大半は扱いが決まります。次の記事では、HYPEを保有した後の運用の選択肢を整理します。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れの可能性があります。記載の数値は最終確認日(2026-08-13)のものです。

学んだら、
運用という選択肢を。

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