前回の記事では、HYPEのバイバック構造を見てきました。手数料がAssistance Fundを通じてHYPEに変わり、供給が減っていく仕組みです。

この構造があるため、HYPEはBNBやFTTのような取引所系トークンと似た文脈で語られることがあります。取引が増えれば手数料が増え、それがトークンの価値と結びつく。この発想自体は、取引所系トークンが昔から持っていたものです。

ただし、HYPEは中央集権取引所(CEX)が発行したトークンではありません。Hyperliquidというオンチェーン取引プロトコルのネイティブトークンです。だから比較するなら、BNBやFTTのようなCEX系トークンだけでなく、GMXやdYdXのようなperp DEX系トークンの文脈もあわせて見たほうが、HYPEの姿が正確に見えてきます。

この記事では、HYPEを取引所トークンという系譜のなかに置いて、どこが似ていて、どこが違うのかを構造から読み解きます。投資判断のための記事ではありません。構造を分類することと、価格が上がることは別です。

取引所系トークンとは何か

取引所系トークンとは、取引所や取引プロトコルと結びついて、手数料割引・手数料収益の還元・バイバック・バーン・ステーキング・ガスといった役割を持つトークンの総称です。法律上の分類ではなく、市場で使われる実務的な見方に近い言葉です。ここではCEXのものに限らず、広めにとらえます。

CEX系トークン:BNBやFTTのような取引所発トークン

BNBはBinanceから生まれ、当初は取引手数料の割引券でした。その後、BNB Chainのガスやステーキング、ガバナンスへと用途が広がっています。FTTはFTXという取引所のトークンで、手数料割引や買い戻し・バーン、担保利用などの仕組みを持っていました。どちらも「取引所の成長」とトークンの価値が結びつけて見られてきました。

perp DEX系トークン:GMXやdYdXなどのオンチェーン取引プロトコル

最近は、CEXだけでなくperp DEX系のトークンも重要な比較対象になっています。GMXは手数料の一部を使ってGMXを買い戻す設計を持ちます。dYdXは手数料がステーカーやバリデータに向かう分配型を基本としつつ、収益の一部をDYDXの買い戻しに充てるプログラムも導入しています。新興のAsterのように、手数料の大部分をトークンの買い戻しに回す例も出てきました。還元の形はプロトコルごとに違います。

Hyperliquidは、この流れのなかでも、手数料収益とHYPEのバイバック構造が特に注目されているプロトコルです。

HYPEはどちらの文脈にもまたがる

HYPEはCEXトークンではありません。一方で、手数料・バイバック・手数料割引・ステーキング・HyperEVMのガス・市場作成といった要素を持っています。だからBNBやFTTのような取引所系トークンの歴史と、GMXやdYdXのようなperp DEX系トークンの現在、その両方の文脈から見ると理解しやすくなります。

HYPEはBNBなどの取引所系トークンと比較できるのか

「HYPEはBNBと同じ」「FTTと同じ」と雑にくくる前に、比較できる点と、比較しすぎると危うい点を分けておきます。

比較できる点

取引活動とトークンの需要が結びつくこと。手数料収益がトークンの評価材料になること。バイバックやバーンが注目されること。手数料割引やステーキングなど、保有する理由があること。プラットフォームの成長がトークンの価格と結びつけて見られやすいこと。これらは取引所系トークンに広く共通し、HYPEも当てはまります。

比較しすぎると危うい点

BNBやFTTはCEXが発行したトークンです。HYPEはオンチェーン取引プロトコルのネイティブトークンです。ユーザー資産の管理、手数料の見え方、オンチェーンでの透明性、担保の使われ方、ガバナンスの構造が違います。同じ枠に入れすぎると、HYPE独自の強みもリスクも見落とします。似ているのは「取引とトークンが結びつく」という発想までで、その先の構造は分けて見る必要があります。

HYPEを6つの軸で比較する

ここがこの記事の中心です。取引所系トークンを見分けるための6つの軸で、HYPEをBNB・FTT、そしてperp DEX系トークンと並べていきます。前回までに見たアロケーションとバイバックを、ここで回収します。

見るのは、価格が上がったかどうかではありません。次の6つです。

  • 初期配分・アロケーション:誰が最初に持ったかで、売り圧や信頼性が変わる
  • 手数料収益とトークンへの還元:収益がどうトークン需要へ戻るかを見る
  • トークンの使い道:取引所内だけか、チェーンやアプリまで広がるか
  • 担保・バランスシート利用:FTT型のリスクがあるかを見る
  • 透明性・オンチェーン性:手数料・保有量・バーン・担保がどこまで見えるか
  • 供給増・アンロック:バイバックだけでなく将来の売り圧を見る

初期配分・アロケーション

誰が最初にトークンを持ったかは、売り圧や信頼性に関わります。

HYPEは、最大供給10億枚のうち31%を初期ユーザーへ配布し(Genesis Distribution)、38.888%を将来のコミュニティ報酬の原資(Future Emissions)に充てました。VC・CEX・マーケットメーカー向けの配分がないとされる点が特徴です。BNBは公開ICOが50%、創業チーム40%、エンジェル投資家10%という形で、インサイダー比率は高めでした。FTTでは、FTX・Alameda周辺の保有や担保利用、流動性、不透明な関係性が、後に大きな論点になりました。

HYPEは、初期ユーザー配布と将来コミュニティ報酬の比重が大きい点で、BNBやFTTとは配分の思想が異なります。ただし配分がコミュニティ寄りだから安全という話ではありません。HYPEにもCore Contributorsの23.8%やFuture Emissionsという将来の供給増があり、これは後で見る供給増・アンロックの軸と合わせて確認する必要があります。

手数料収益とトークンへの還元

手数料がトークンにどう戻るかは、取引所系トークンの核心です。ここで見るべきは「バイバックがあるか」ではなく、原資・還元先・透明性です。

HYPEはAssistance Fundを通じて手数料がHYPEに変換され、バーン扱いになります。BNBは価格とブロック数に基づくAuto-Burnで供給を減らします。FTTも手数料収益の一部を買い戻し・バーンに使う設計を持っていました。GMXは手数料の一部でGMXを買い戻し、dYdXは収益の一部をDYDXの買い戻しへ向けています。

注意したいのは、バイバックがあること自体は価格を保証しないという点です。2025年には多くのプロトコルが多額の資金を投じてトークンを買い戻しましたが、価格が下がり続けた例も少なくありません。供給の増加や売り圧が買い戻しを上回れば、価格は下がります。バイバックは需給の一要素であって、万能の支えではありません。

トークンの使い道

保有する理由が手数料割引だけなのか、それ以上に広がっているかを見ます。

HYPEは手数料割引、ステーキング、HyperEVMのガス、HIP-1やHIP-3での市場作成など、複数の使い道を持ちます。BNBは取引所利用に加え、BNB Chainのガス・ステーキング・ガバナンス・各種アプリへ広がっています。FTTはFTX内の手数料割引や担保利用が中心でした。perp DEX系トークンはステーキングやガバナンス、報酬が中心で、プロトコルごとに差があります。

HYPEはBNBほど成熟したエコシステムではありませんが、FTTより使い道がオンチェーンに広がりやすい構造を持っています。

担保・バランスシート利用

ここがFTTの崩壊から学ぶべき、最も大事な軸です。

FTTの問題は、取引所トークンだったことそのものではありませんでした。発行体の関連会社が、自分たちで発行したFTTを担保にして資金を借りていたこと——つまり自己参照の構造にありました。供給の多くを自分たちで保有し、その自分のトークンを担保にしていたため、担保価値が自分たちの保有状況と強く結びついていた。上昇局面では強く見えますが、いったん価格が下がると、担保価値の下落が信用不安を呼び、返済を迫られ、連鎖的に崩れます。FTTが数日で価値の大半を失った背景には、この構造がありました。

ここで問われるのは、自己発行トークンが、発行体や関連会社の担保・資産として大きく組み込まれているかどうかです。HYPEについては、プロトコル自身が自分のトークンを担保に借金を膨らませる、という構造は今のところ見当たりません。この点で、HYPEはFTTと明確に違います。ただし将来、HYPEがどこで担保として使われ、大口の保有者がどう扱うかは、引き続き見ておく必要があります。

透明性・オンチェーン性

手数料・保有量・バイバック・バーン・担保が、どこまで外から見えるかという軸です。

HYPEはAssistance Fundの動きや手数料、バーン扱いを、オンチェーンのデータや外部のダッシュボードで追いやすい構造です。BNBは取引所側の開示とBNB Chainのオンチェーンデータの両方を見る必要があります。FTTでは、FTXと関連会社のあいだの関係や顧客資金の扱いが不透明だったことが、崩壊の一因になりました。perp DEX系トークンはオンチェーン性が高い一方、ガバナンスや運営主体の裁量がどこまで及ぶかは別途確認が要ります。

透明性は、何かが起きる前に異変に気づけるかどうかに関わります。オンチェーンで追える情報が多いほど、判断の材料は増えます。

供給増・アンロック

バイバックやバーンで供給が減る話だけを見ると、将来の供給増を見落とします。

HYPEではFuture Emissionsやコア貢献者、Foundationの配分が、将来の供給増として論点になります。BNBはバーンによる供給減を進めています。FTTでは、大量保有と流動性の薄さ、売却圧力が問題になりました。perp DEX系トークンでも、チームや投資家、報酬配布の解除は売り圧として意識されます。

買い戻しという供給を減らす力と、アンロックという供給を増やす力は、つねに綱引きの関係にあります。実効フロートの薄さとあわせて、両方向で見る必要があります。

HYPEはBNBかFTTかではなく、HYPEとして見る

6つの軸で並べてみると、HYPEの位置が見えてきます。

BNBに近い面

手数料収益とトークンの需要が結びつき、バイバックやバーンが評価材料になる。エコシステムの利用が広がれば評価の軸が増える。この点でHYPEはBNBに近い面があります。ただしBNBほど成熟し、多角化したエコシステムにはまだ達していません。同じ成熟度で見るのは早いといえます。

FTTと違う面

FTTの失敗は、取引所トークンであること自体ではなく、自己発行トークン・関連会社・担保・顧客資金・不透明性が絡んだことにありました。HYPEの主な論点は、手数料、Assistance Fund、オンチェーン性、供給、アンロック、エコシステムの成長です。見るべきリスクの種類が違います。FTTと同じと見るのは雑ですが、FTTから学べる流動性・透明性・担保のリスクはあります。

perp DEX系トークンとして見る面

HYPEはCEXトークンではなく、perp DEX、つまりオンチェーン取引プロトコルの文脈で見るべきトークンです。GMXやdYdXと同じく、取引量・手数料・ステーキング・ガバナンス・報酬設計・オンチェーン透明性が評価の軸になります。ただしHyperliquidは独自のL1を持ち、HyperCoreとHyperEVMの二層構造やHYPEのバイバックを備えるため、既存のperp DEXとも単純には同じではありません。

HYPE独自のリスク

HYPEはBNBでもFTTでもなく、Hyperliquid独自の構造として見る必要があります。perpの出来高への依存、手数料率の低下、競争、Future Emissions、コア貢献者のアンロック、実効フロートの薄さ、技術やガバナンスのリスク。これらはBNB/FTTの比較の枠には収まりません。分散化やJELLY事件のような介入といった固有の論点も別にあります。

まとめ:取引所トークンの系譜でHYPEを読み解く

HYPEは、手数料やバイバックと結びつく点で取引所系トークンの文脈で語られやすいトークンです。ただしCEXトークンではなく、Hyperliquidというオンチェーン取引プロトコルのネイティブトークンです。

6つの軸で見ると、HYPEは収益とトークンが結びつく点でBNBに近い面があり、自己参照という点でFTTとは明確に違います。初期ユーザー配布と将来コミュニティ報酬の比重が大きい点で、配分の思想も両者と異なります。とはいえBNBほど成熟しているわけではなく、FTTから学べる流動性・透明性・担保のリスクもあります。perp DEX系トークンとしては、GMXやdYdXと同じ軸で見つつ、Hyperliquid独自の構造も踏まえる必要があります。

結局のところ、HYPEはBNBかFTTかという二択で決まるものではありません。大事なのは、二択でラベルを貼ることではなく、自分で確認できる物差しを持つことです。取引所系トークンを見るときは、次の6点を確認すれば、HYPEだけでなく、次にどんなトークンが出てきても自分で評価できます。

  • 配分はどこにあるか(発行体が握っているか、分散しているか)
  • 収益はどう還元されるか(原資は実需か、透明か)
  • 使い道は広がっているか(手数料割引だけか、チェーンやアプリまでか)
  • 担保や自己参照のリスクはないか(自分のトークンを担保にしていないか)
  • 透明性はどうか(オンチェーンで追えるか)
  • 将来の供給はどうか(アンロックや排出が控えていないか)

次の記事では、こうした収益構造を前提に、HYPEのバリュエーションをどう見るのかを扱います。

本記事は情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れの可能性があります。記載の数値は確認時点のものです。

学んだら、
運用という選択肢を。

登録はこちら →