Hyperliquidは今ではDEXの中で一際目立った存在となっていますが、どうやって競合のDEXを抑え、現在の様なシェアを獲得したかご存知ですか?
Hyperliquidがローンチした時は、さまざまなperp DEXがユーザーを奪い合う戦国時代の様な状況でした。
この記事では、FTX破綻後の流れから説き起こし、競合のdYdX・GMXとHyperliquidがそれぞれどんな設計を選んだのかを比較します。
その上でHyperliquidの勝因を分析してみましょう。

2022年11月、大手中央集権取引所(CEX)のFTXが経営破綻が発表され、FTXに対して取り付け騒ぎが発生。
すぐに出金は停止され、利用者は取引所に預けていた資産が引き出せなくなりました。
これにより、「取引所に資産を預ける」という前提に不信が一気に広がると同時に、資産の自己管理の重要性が高まったのです。
このとき注目を集めたのが、ウォレットで資産を管理したまま取引できる分散型取引所(DEX)でした。
なかでも無期限先物を扱うperp DEXは、CEX同様のレバレッジ取引を資産を預けずに行える場として、再評価されます。
実際、FTX破綻の直後には、オーダーブック型のdYdXの利用者が4割近く増えたと報じられています。
中央集権取引所から離れた資金とユーザーの一部がDEXに流れて行ったのです。
ただし、当時のperp DEXはまだ課題を抱えていました。
オンチェーンで、CEXのように速くて厚い板をどう成立させるか。この問いに各社がどう答えたかが、その後の勝負を分けます。

dYdXは、CEXになじみのある板取引をDEXに持ち込んだ先駆者です。
ただし、速さと分散を完全に両立させる手前で、壁に向き合い続けました。

dYdXの先駆性は、価格ごとの注文を一覧で並べる板を、分散型の文脈で提供しようとした点にあります。
板取引は価格と数量が見えるため取引しやすく、大口でも約定しやすい利点があります。
多くの分散型取引所がプール型を選ぶなか、dYdXは板という難しい仕組みに早くから挑みました。
CEXから移ってきたトレーダーが、なじみのある取引画面を分散型でも使える意味は大きかったのです。
一方でdYdXは、板のマッチング(注文どうしの付け合わせ)を速く処理するため、その処理をチェーンの外に置く設計を取りました。
当初はイーサリアムのL2上の仕組みから始まり、後に独自チェーン(dYdX Chain)へ移りました。
移行後も板そのものは各バリデータのメモリ上で保持し、確定した約定だけをチェーンに記録する設計が続いています。
速さは得られた一方、板の処理がチェーンの外に残るため、分散と速度を完全に両立させる壁が残りました。

GMXは、板そのものを持たないという別の道を選びました。流動性をひとつのプールにまとめ、外部から取り込んだ価格で取引を成立させる方式です。

GMXは、買い手と売り手を板で付け合わせるのではなく、まとめた流動性プールを相手に取引する仕組みを実装しました。
価格は外部から取り込んだオラクル価格を使うため、プールが受けられる範囲の取引なら、価格のズレ(スリッページ)が起きにくくなります。
板が薄いと約定しづらい新興DEXの弱点を、プール型はうまく避けました。小口で取引する利用者にとっては、滑らかに約定できる使い心地は良いUXだったでしょう。
ただし、この仕組みにはいくつか課題がありました。
まず、プールが一度に受けられる量には上限があり、ポジションが一方向に偏るとその分のコストが発生する点です。
つまり、大口の取引ほど、この上限と偏りの影響を受けやすくなるのです。
そして最も大きいのは、プールに資金を出した側が、トレーダーの損益の反対側を引き受ける構造です。
トレーダーが勝てばプールの提供者が負う関係になります。
同じくvAMMという仕組みを使ったPerpetual Protocolも、近い課題を抱えていました。

Hyperliquidは、dYdXのように板を持ちながら、その処理をチェーンの外に逃がさず、取引専用の独自チェーンの上でまるごと完結させる答えを出しました。
先行者がぶつかった壁を設計の形そのもので越えた点が、勝因とされています。
Hyperliquidの最大の特徴は、dYdXがチェーンの外で処理していた板を、チェーン上で完結させた点です。
注文を出す、消す、約定する、清算する。この一連をすべてチェーン上で動かします。
板の使いやすさを保ったまま、処理をオフチェーンに逃がさないことで、dYdXが向き合った「分散と速度の両立」に正面から答えました。
約定や清算の経緯がチェーン上で追える透明性も、CEXとは異なる強みです。
完全オンチェーンを可能にしたのが、取引に特化した独自のL1チェーンを自前で作ったことです。
汎用チェーンは処理に時間がかかり、活発な売買には不向きでした。
HyperliquidはHyperBFTという取引処理のための独自の仕組みを備えたチェーンを自前で用意し、1ブロックで取引が確定する速さを分散した環境で実現しました。
理論上は1秒あたり約20万件の注文を捌くことが可能で、中央集権取引所に近い速さを実現しています。
土台のチェーンから自前で持つことが、完全オンチェーンの板を支えています。
もう一つの勝因が、流動性の集め方です。
Hyperliquidは、板に常時気配を出すマーケットメイク用の資金プール(HLP)を流動性確保の方法として組み込んでいます。
このHLPには、誰でもUSDCを預けて参加でき、マーケットメイクで生じた損益を分け合えます。
一部の専門業者だけが担っていたマーケットメイクを広く開いた点が、民主化と呼ばれる理由です。
厚い板が取引を呼び、取引がさらに流動性を集める循環につながったとされています。
ただし、このHLPは最終的にトレーダーの損益を引き受ける側に回る点で、GMXのプールと共通のリスクを持ちます。
2025年3月のJELLY事件では、特定銘柄の急変でこのプールに損失が生じ、運営側が当該銘柄の扱いを止める判断を下したと報じられました。
設計上の強みと、預け入れのリスクは表裏一体です。
設計の違いは、取引量や流動性などの数字にも表れます。ただし、これらの数字は相場やキャンペーンで短期間に大きく動くため、出典日とともに「その時点のもの」として読む必要があります。
| 比較項目 | Hyperliquid | dYdX | GMX |
|---|---|---|---|
| 24時間取引量(perp) | $9.7B | 132M | 94.69M |
| TVL | $5.9B | 135M | 174M |
| OI(未決済建玉) | $9.7B | 62M | 60M |
取引高やシェアは、後発の参入で激しく動きます。後発のAsterはCZ氏らの陣営が支援し、日次の取引高でHyperliquidを上回る場面もありました。
ただしその取引高には、実態のない水増し(ウォッシュトレード)の疑いが指摘され、データ集計大手のDefiLlamaは2025年10月にAsterの無期限先物データの掲載を取りやめています。
数字を見るときは、取引高の出どころと、資金がそこに居着いているか(預かり資産との比)まで確認するのが安全です。
こうしてデータで並べても、Hyperliquidが取引量・建玉ともにperp DEXで最大級である構図が見えます。
perp DEXの競争においては、「板(オーダーブック)をどう扱うか」という部分が鍵を握りました。
ただし、強みとリスクは表裏一体という点で注意が必要です。流動性を支えるHLPは最終的にトレーダーの損益を引き受け、JELLY事件のような事態も起きました。
どこに資金を置くか、あるいは見送るかを判断する際には、シェアの大きさではなく、どの設計のトレードオフを受け入れられるかで判断するのが安全です。