板取引の話になると「HyperCore」、DeFiやエアドロップの話になると「HyperEVM」。同じHyperliquidのはずなのに別々の名前で語られて、頭の中で結びつかないまま読み進めてきた方も多いはずです。
この2つは、別々のチェーンではありません。Hyperliquid L1という一本のブロックチェーンの中にある、二つの層です。取引そのものを担う専用エンジンがHyperCore、自由にアプリを動かせる汎用の基盤がHyperEVM、という役割分担になっています。
この二層を分からないまま次のDeFiの記事に進むと、買ったHYPEや、取引に使う証拠金を、どちらの層に置けばいいのか決められず、手が止まってしまいます。置き場を自分で判断できることは、無駄な移動コストや余計なリスクを避けることに直結します。
この記事では、HyperEVMとHyperCoreがそれぞれ何か、Hyperliquid L1の中でどう分かれ、どう連携しているのか、そして買ったHYPEをどちらに置くべきかまでを、専門用語をかみ砕いて順に整理します。読み終えるころには、自分の資金の置き場を取引用とDeFi用に切り分けられるようになるはずです。
HyperEVMは、EthereumなどでおなじみのスマートコントラクトをHyperliquidのL1上でそのまま動かせるようにする実行(エグゼキューション)レイヤーです。
Hyperliquid L1の中で「自由にアプリを作れる側」を受け持ち、アプリを動かすときの手数料(ガス代)はHYPEで支払います。
HyperEVMの一番の役目は、外部のアプリ(DApps)をHyperliquidのチェーンでも動く環境を提供し、エコシステムを広げることです。
取引に特化したHyperCoreだけでは、貸し借りや積み立てといった多様なサービスまではカバーできません。
そこにレンディングや分散型取引所などのアプリが乗ることで、ひとつの取引所が「金融サービスが集まる場所」へと育っていきます。
実際、HyperEVMがメインネットで動き始めた2025年2月以降、その上に構築されたプロジェクトは2026年に入って170を超えました。
預けられた資産(TVL)も約14.5億ドル、日本円にしておよそ2,200億円の規模に達しています(2026年6月時点)。
これだけアプリが集まるのは、HyperEVMが「EVM互換」だからです。
EVMはEthereumで使われている共通の実行環境で、HyperEVMはその仕様に準拠しています。
そのため、Ethereumなど他のEVM系チェーンで動いているDAppsを、大きな作り直しなしでHyperliquidへ持って来られます。
開発者にとっては、使い慣れたSolidityのコードやMetaMaskなどのツールがそのまま使えるため、参入のハードルが低いのです。
HyperEVMには、他のチェーンにはない強みがもう一つあります。
HyperEVM上のアプリは、同じL1の中にあるHyperCoreの板取引の価格や流動性を、直接参照しながら動けます。
他の多くのチェーンでDeFiを動かすときは、価格を外部の「オラクル」という別サービスから取り込みます。
更新に間隔があるため相場の急変時に実際の値動きとずれやすく、その隙を突いた価格操作や誤った清算が弱点とされてきました。
HyperEVM上のDeFiはCoreにある実際の取引価格をそのまま使える分、オラクル特有のズレや依存という弱点を避けることができます。
HyperCoreは、板取引・清算・ステーキングといった「取引の中身そのもの」を担う専用エンジンです。
HyperEVMのような汎用の仮想マシンではなく、取引に特化して作り込まれたネイティブの仕組みで、ガスが必要ない部分がHyperEVMとの一番の違いになります。
HyperCoreでの操作にガスがかからないのは、これらが「チェーンに作り付けの決まった動作」だからです。
そもそもガスとは、チェーンに記録するための料金ではなく、プログラムを動かす計算に対して支払う料金です。
Ethereumは誰でもスマートコントラクトを載せられるため、その処理が無限ループに陥らないよう、命令ごとに重さを測って課金します。
HyperCoreの操作は、自販機のボタンのように動作があらかじめ決まった「作り付け」で、測るべき自由な計算がありません。
これらは署名された指示として、ブロックを作る合意の中に記録され、オンチェーンに残るのに、ガスはかかりません。
では、手数料のかからない取り消しや未約定の注文まで無料で記録されるのに、なぜ乱用されないのか。
ガスの代わりに、取引量に応じた回数制限で歯止めをかけているからです。
トレーダーが実際に払うのは、約定したときの取引手数料だけです。
HyperCoreは、HYPEのステーキング(バリデータへの委任)も受け持っています。
ここで押さえておきたいのが、ステーキングに使う残高は、板取引に使う取引残高とは切り離して管理されるという点です。
HYPEをステーキング用の残高に移し、バリデータに委任することで、チェーンの安全を支える見返りとして報酬が分配される仕組みになっています。
ただし、いったん預けたHYPEはすぐには引き出せず、解除には一定の待機期間が設けられています。

ここまでで、取引を担うHyperCoreと、アプリを動かすHyperEVMの中身が見えてきました。
大事なのは、この2つが別々のチェーンではなく、同じHyperliquid L1の上に乗った二つの層だということです。
HyperBFTという一つの合意の仕組みが、両方の実行をまとめて支え、どちらの層でも同じHYPEが使われています。
2つを層として分けているのは、取引の速さを守るためです。
HyperCoreは速さを最優先に作り込まれており、そこへ誰でも自由に書けるスマートコントラクトを混ぜると、処理時間が読めなくなって板取引の速さが巻き添えで落ちかねません。
そこで、自由なアプリはHyperEVMという別の層に切り分け、取引のレーンに重い処理が流れ込まないようにしているのです。
つまりHyperliquid L1は、「取引を一手に引き受けるコア(HyperCore)」と「その周りに金融サービスを広げる汎用基盤(HyperEVM)」の二段構えになっている、と捉えると位置関係がはっきりします。
Hyperliquidを単なるperp取引所ではなく、この二層が組み合わさったチェーンとして見るのが、正しい捉え方です。
分かれていても、2つの層はばらばらに動いているわけではありません。
連携を支えているのは、大きく3つの仕組みです。それぞれ詳しくみてみましょう。
1つ目は、両方の層が同じ合意の仕組み(HyperBFT)の上で動いているという土台です。
HyperCoreの取引もHyperEVMのアプリも、別々に確定するのではなく、同じHyperBFTが一本の記録としてまとめて刻みます。
処理の順番も決まっていて、まずL1のブロックが確定し、続いてEVMのブロックが作られ、そのあとEVMからHyperCoreへの転送、最後にCoreWriterのアクション、という順で進みます。
2つの層の状態が食い違わず、いつも一本の記録に揃うのは、この共通の土台があるからです。
Read precompileとはHyperEVMのアプリがHyperCoreの中の情報を読み取るための、専用の窓口です。
HyperEVMには、0x0800から始まる特別なアドレスが用意されていて、ここを通すとHyperCoreが持つ価格情報・建玉・残高・ステーキングの状況などを直接読み取ることができるようになります。
読み取れる値は、そのEVMブロックが作られた時点のHyperCoreの状態と一致することが保証されています。
このおかげで、HyperEVM上のDeFiは、外部のオラクルに頼らずともHyperCoreが持つ価格を直接参照してアプリを組無ことができます。
CoreWriterは、読み取りとは逆向きに、HyperEVMのアプリからHyperCoreへ指示を送るための仕組みです。
CoreWriterという専用の窓口(0x3333で始まるアドレス)にアクションを送ると、ガスを焼却(バーン)したうえで記録が発行されます。
それをHyperCoreが、注文・現物の送付・運用枠の操作といったアクションとして処理する流れです。
注文などは、速さの抜け駆けを防ぐために数秒だけ遅らせて実行される作りになっています。
このCoreWriterは2025年7月にメインネットで動き始め、これによって「読み取り」と「書き込み」の双方向のやり取りがそろいました。
時系列で見ると、HyperEVMは2025年2月に稼働した当初、HyperCoreの情報を読み取ることはできても、書き込む手段は限られていました。
そこへCoreWriterが加わったことで、アプリ側からHyperCoreへ注文を出せるようになり、二層が本当の意味で連携するようになったのです。
二層の役割が分かると、最後に残るのは「自分のHYPEをどちらに置くか」という実用的な問いです。
答えは、何をしたいかで決まります。
板取引やステーキングをしたいなら置き場はHyperCore、DeFiで運用したいなら置き場はHyperEVM、というのが基本の切り分けです。
HYPEをバリデータに委任して報酬を得たいなら、HyperCoreのステーキング残高に置きます。
板取引で先物などを売買するときの証拠金もHyperCore側ですが、証拠金として主に使うのはUSDCで、HYPEそのものをトレードの担保にするわけではない点は分けて押さえておきましょう。
一方、レンディングで貸し出す、流動性を提供する、新しいアプリのエアドロップを狙って触ってみる、といった運用はすべてHyperEVM側で行います。
HyperEVMでアプリを操作するときのガス代もHYPEで支払うため、いくらか手元に残しておく必要があります。
気をつけたいのは、HyperCoreとHyperEVMの間でHYPEを移す時にコストがかかることです。
2つの層の間の移動は専用のアドレスを通じて行われ、どちらの向きでも、その都度ガス代(HYPE)と数秒ほどの待ち時間が発生します。少額のつもりでも、何度も行き来させればその分だけコストがかさみます。
用途をあらかじめ決めて置き場を固定し、こまめな往復を避けるのが、コストを抑える合理的なやり方です。
板取引の証拠金とステーキングはHyperCoreに、DeFiで動かす資金はHyperEVMに、と切り分けておけば、迷わずに済みます。
ここまで、HyperCoreとHyperEVMがそれぞれ何を担い、どうつながっているのかを見てきました。
要点を整理します。
HYPEは、HyperCoreではステーキングでチェーンの安全を支え、HyperEVMではガス代やDeFiの元手として使われる、両方の層をまたいで働く資産です。
この構造を押さえたことで、HYPEのエコシステムで活用する上での前提知識として活きるでしょう。